肩の痛み

肩の痛み

肩の痛みは、肩周辺の筋肉や靱帯に障害が生じることが多く、特に加齢に伴う筋力の衰えが影響を与えます。肩関節は外れやすい構造を持ち、周囲の筋肉や靱帯がその安定を支えています。筋力の低下により、肩にかかる負荷が増加し、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)や腱板炎、変形性肩関節症などの症状が引き起こされることがあります。

また、外傷や神経障害、内科的な疾患(例:甲状腺機能亢進症、肺疾患、心疾患、糖尿病)も肩の痛みの原因となることがありますが、これらの痛みは肩の動きによって変化しないのが特徴です。肩の痛みの中で最も一般的な原因は肩関節周囲炎であり、特に四十肩や五十肩として知られています。スポーツを行う人々には、腱板炎や腱板断裂による肩の痛みが多く見られます。

肩関節周囲炎(五十肩)

肩の痛みの主な疾患として肩関節周囲炎(五十肩)が挙げられます。この疾患は、肩関節の痛みや可動域制限を伴い、原因が明確に特定できない状態です。症状としては、腕を上げられない、肩のこわばり、夜間の痛みなどがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。

肩関節周囲炎は、画像診断では異常を確認することが難しいですが、発症のメカニズムとしては、肩関節を構成する骨や軟骨、靱帯、腱の老化や血液循環の悪化が関与していると考えられています。この結果、肩関節周囲に炎症が生じ、腫れや痛みが引き起こされます。

この疾患は、炎症期、拘縮期、回復期の3つの病期を経ます。炎症期では強い痛みが続き、痛み止めや貼付薬、場合によっては関節注射が行われます。拘縮期に入ると痛みは和らぎますが、肩関節の動きが制限されるため、リハビリテーションが重要です。回復期では痛みが軽減し、関節可動域訓練や筋力増強を含むリハビリが行われます。

変形性肩関節症

変形性肩関節症は、主に加齢に伴い肩関節の軟骨が変性し、消失することで発生します。この状態は肩に痛みを引き起こし、関節の可動域に制限をもたらします。特に、拳上が困難になることが特徴です。肩関節周囲炎や腱板断裂と症状が似ていますが、腱板断裂がない場合にこの疾患と診断されます。

診断には、X線撮影を用いて関節の変形の有無を確認し、MRIを使用して腱板断裂の有無を判断します。治療が必要な場合、痛みの軽減には消炎鎮痛薬、湿布、ステロイド注射が用いられます。また、関節の可動域を維持するためのリハビリテーションも重要です。変形が進行し、日常生活に支障をきたす場合には、人工肩関節置換術が検討されます。

腱板断裂

腱板断裂は、肩にある4つの腱(棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱)が断裂する状態を指します。これらの腱は肩の挙上に重要な役割を果たしており、加齢や外傷、機械的刺激によって断裂が生じることがあります。腱板断裂が発生すると、肩に痛みが生じ、物を持ち上げる動作が困難になることがあります。特に棘上筋腱が断裂しやすいですが、他の腱も放置すると症状が進行します。

腱板断裂が疑われる場合、強い肩の痛みや挙上困難が見られます。診断にはMRIが用いられ、レントゲンでは腱板が確認しにくいため、正確な評価が必要です。治療方法は断裂の程度によって異なり、小さな断裂の場合は消炎鎮痛薬や湿布、リハビリテーションが行われます。大きな断裂の場合は、鏡視下腱板縫合術が選択され、さらに重度の断裂では人工関節置換術が考慮されます。