肘や手首の痛みは、日常的に使用される関節であるため、整形外科的な問題が発生しやすい部位です。特に、肘部管症候群や手根管症候群、ばね指、ドケルバン病、ガングリオンといった疾患が多く見られます。これらの疾患は、患者にとって日常生活に支障をきたすことがあり、適切な診断と治療が重要です。整形外科的なアプローチにより、症状の軽減や機能の回復が期待されます。
肘部管症候群は、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫または牽引されることによって発症する病気です。この状態では、くすり指の尺側や小指にしびれが生じ、進行すると骨間筋の萎縮や屈曲拘縮が見られ、最終的には鷲手の状態になることがあります。また、指を閉じる筋力の低下も伴います。
発症の原因には、肘の変形、ガングリオンなどの腫瘤、神経を固定する靭帯の肥厚、スポーツによる傷害、さらには小児期の肘の骨折後の変形が含まれます。
治療方法は症状の程度によって異なります。軽度のしびれの場合は、患部を安静にし、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用します。また、神経の回復を促すためにビタミンB12の摂取が推奨されます。一方、強いしびれや麻痺がある場合、または神経が圧迫されている場合は、手術療法が必要となります。
手根管症候群は、主に女性に多く見られる疾患で、特に妊娠期や中年期に手を多く使う女性に発症しやすいとされています。この症状は、正中神経が手根管内で圧迫されることによって引き起こされ、手のひら側の親指から薬指の内側半分に痛みやしびれが生じることが特徴です。特に夜間や起床時に症状が強く現れ、指を使う動作が困難になることもあります。患者の約70%は両手に症状が出ることが多く、進行すると物をつかむ力が弱まることがあります。
発症の原因は明確ではありませんが、手の酷使や骨折による変形、透析、腫瘤による圧迫などが考えられています。治療はまず保存療法から始まり、患部を副子で固定したり、NSAIDsやビタミンB12を服用することが推奨されます。また、ステロイド注射による治療も行われますが、注射時に痛みが伴うことがあります。
保存療法で改善が見られない場合は、手術療法が検討されます。手術では、正中神経への圧迫を軽減するために手根管を覆う靭帯を切除します。手術方法には、皮膚を切開する手根管開放術と、低侵襲な鏡視下開放術があります。
狭窄性腱鞘炎、またはドケルバン病は、主に手首の親指側に痛みや腫れを引き起こす病気であり、親指の腱と腱鞘に炎症が生じます。この病気は、特に手指を頻繁に使用する人々や、妊娠期・出産期・更年期の女性、さらには糖尿病や関節リウマチの患者に多く見られます。
主な症状には、親指の腫れや痛みがあり、特に親指を手首の内側に向けて動かす際に痛みが強くなることがあります。また、親指の動きが制限されることやしびれを感じることもあります。
治療方法には保存療法と手術療法があり、保存療法では手を固定して安静にすることや消炎鎮痛薬の使用が推奨されます。特に腱鞘内のステロイド注射が効果的ですが、繰り返し注射を行うと腱を傷める可能性があるため、必要に応じて手術療法に移行することがあります。手術療法では腱鞘切開術が行われ、炎症部位の腱鞘を切開して腱を開放することで症状を改善します。この手術は小さな切開で済み、所要時間は約30分です。
手関節に見られるゼリー状の腫瘤は、ガングリオンと診断されます。この腫瘤は関節包や腱鞘から発生し、内部には関節液が貯留しています。診断が不明な場合は、腫瘤に穿刺して内容物を調べることが可能です。腫瘤は触れると弾力があり、通常は痛みを伴わず、放置しても問題ありませんが、神経が圧迫されている場合は切除が必要です。腫瘤の大きさは米粒からピンポン玉程度まで様々です。
発症の原因は不明ですが、特に若い女性に多く見られ、手をよく使うことが直接的な要因ではないとされています。治療については、無症状の場合は特に介入は必要なく、自然に消失することもありますが、診断のためには一度医療機関を受診することが推奨されます。治療が必要なケースは、腫瘤による神経圧迫や痛み、腫瘤の増大が見られる場合です。
切除方法としては、腫瘤に注射針を刺して中身を吸引していく穿刺吸引術(再発する可能性が高いです)、ガングリオンを摘出していく手術療法(皮膚を切開して袋ごと摘出する切除術、数mm程度皮膚を切開して内視鏡によって切除する視鏡下切除術)になります。